第39回学級経営実践セミナー(高知)
「どの子もが安心して過ごせる居心地のよい学級(学校)を目指して~心理的安全性の視点も踏まえて~」」
実施報告
✕心理的安全性を考える会 高知

1 開催趣旨
今回は,「どの子もが安心して過ごせる居心地のよい学級(学校)を目指して~心理的安全性の視点も踏まえて~」というテーマでした。昨年度のセミナーの内容(学級の心理的安全性を高めるために)も踏まえた上で,今年度も学級の心理的安全性の向上を目指してそれぞれの視点から取り組んできた学級経営の実践について,心理的安全性を考える会(高知)のメンバー2名が発表しました。講師には,上越教育大学教職大学院の赤坂真二先生と阿部隆幸先生をお招きし,それぞれの実践に対するご助言をいただきました。また,シンポジウムではお二人の講師の先生方と本会のメンバーで一緒にテーマについて協議をしながら,どの子もが安心して過ごせる学級づくりのために大切なことを明らかにしていきました。
2 日時:2025年11月29日(土)13:30~16:30
3 会場:高知大学教育学部附属小学校
4 参加者数:40名+学会理事2名(赤坂真二先生,阿部隆幸先生)
5 プログラム(時程):
13:30~ 開会 日程説明
13:35~ 基調提案 松山 起也(前高知大学教育学部附属小学校)
13:55~ 実践発表①「どの子もが安心できる学級づくり~互いに認め合える活動を通して~」
中家 和音(高知市立行川学園)
14:15~ 質疑応答
14:25~ 赤坂先生,阿部先生からコメント
14:50~ 実践発表②「全員が安心して過ごせるあったかい学級を目指して~あったかい学級から
あったかい学校へ そして未来へ~」
白石 大樹(高知市立朝倉第二小学校)
15:10~ 質疑応答
15:20~ 阿部先生,赤坂先生からコメント
15:45~ シンポジウム
シンポジスト:赤坂 真二先生,阿部 隆幸先生,藤崎 文登(高知市立横浜新町小学校)
ファシリテーター:松山 起也(前高知大学教育学部附属小学校)
「どの子もが安心して過ごせる居心地のよい学級(学校)づくりのために大切なこと」
16:30 事務連絡,閉会
8 当日の様子
最初に,松山から心理的安全性に関する研究の基調提案として,これまでの研究で開発した「心理的安全性尺度」と心理的安全性を高めるための授業実践や,心理的安全性を考える会(高知)のメンバーが実践してきたことを発表した後,中家,白石の2名からそれぞれ実践発表をしました。

2名の発表に対して,理事の赤坂先生,阿部先生から,以下のようなご助言を頂きました。
<赤坂先生より>
○中家先生は所属欲求の持たせ方がうまい。特性が強い児童(Aさん)にもまずは丁寧に愛情を伝えたことで,教師とAさんとの関係を構築することができ,その先生の関わり方が,周りの児童のAさんに対しての安心感にもつながった。今後はさらに次へのステップとして,子どもたち同士がポジティブな言葉だけでなくネガティブな言葉でも安心してはける雰囲気をつくるということを考えていってほしい。
〇白石先生の実践は,学級経営研究として客観的データに基づいてまとめることができている。「学級経営サイクル」(①課題発見→②目標設定→③実行→④振り返る)の実践における白石先生の関わり方は,状況的リーダーシップ論と重なる。年度はじめは教師主導で一定のフレームを作りながら,2学期あたりの段階になると支援型リーダーシップ,委任型リーダーシップへと変容していっている。一方で,「1対1の関係づくり」については1年間を通して継続的にできているところも大切なポイントである。

<阿部先生より>
○中家先生の実践では,学級の子ども一人ひとりに役割があるということの意味付けがなされていた。花メダルの実践は,学びのモデル「つかむ(どんな学級にしたいか)→活動する(花メダル)→振り返る(認定式)→つかむ→…」とも重なっており,子どもたちが自分の強みを自覚できるような働きかけをしながらも,教師と子ども,子ども同士の関係性を構築しながら。子どもたちのウェルビーイングの向上を目指すことができていた。
〇白石先生の実践では,子どもたちが問いに没頭したり,良好な人間関係を築いたり等,PERMA理論と重なる子どもの姿が多くあった。一方で,子ども同士の関係性が良くなると,それによって同調圧力がかかってしまう恐れもある。そうならないためには,「会話」ではなく「対話」ができるようにしていく必要がある。

シンポジウムでは,「どの子もが安心して過ごせる居心地のよい学級(学校)づくりのために大切なこと」をテーマに,メンバーの藤崎の提案や2名の実践発表の内容をもとに,赤坂先生,阿部先生と松山の4人で協議しました。話し合いを通して,子どもたちが学校で幸福感を感じられるためには友人関係が重要であること,子どもがそこに自分の居場所があると感じられるようにするには相手意識をもてるようにすること,「対話」に向けての第一歩は「傾聴」であること等,同調圧力を乗り越えた学級経営を実現するために大切なことのヒントをたくさん得ることができました。
赤坂先生,阿部先生をはじめ,参加した皆さんからもたくさんのご意見を頂けたことで,また新たな課題が見え,メンバー一同「早速明日からの実践に生かしていきたい!」と意気込んでいるところです。
また,今回のセミナーを通して,これまで心理的安全性を考える会(高知)のメンバーで一緒に取り組んできたことも評価して頂き,これからもチームで実践・研究を継続していきたいという思いがますます強まったことでした。
このような貴重な機会を頂き,本当にありがとうございました。

【参会者アンケートより】
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とても学びの多い実践報告でした。心理的安全性の確保のために子どもの実態に応じて適切な教師の役割を明確化し、実践されている姿勢に感銘を受けました。赤坂先生や阿部先生のコメントや提案内容も心が打たれる言葉がたくさんありました。これらの内容をしっかりと吟味整理して、明日からの実践に生かしたいと思いました。このような機会を設定していただき、本当にありがとうございました。
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限られた時間の中で、学級の課題分析やアプローチ、そしてどのような変容があったのかについて発表がありました。どの実践からも、子どもたちへの温かさや教育への情熱が伝わってきました。学級経営の魅力を感じると同時に、自分も学級経営に取り組みたいと思いました。
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お二人の実践発表を通して、教師の「役割」、「存在意義」とは何かを考えることができました。学校で学ぶことの意味を考えないといけない時期に来ていると感じていて、学校でしかできない学びとは何かを考えています。今の段階では「子どもと子どもをつなげる」「子どもと学びをつなげる」ことが、教師の役割であると感じています。白石先生の発表からは、教師の役割を変化させながら、子どもに合わせることの重要性、中家先生の発表からは、子どものつながりを広げるための一人とつながる重要性を学びました。
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中家先生と白石先生の発表から、たくさんのことを学ぶことができました。特に白石先生の学級経営の四つのプロセスの回し方取り組み方については、これまでの自分の実践を振り返ると不十分な部分が明確になりました。このプロセスを期間ごとに実際にどのように行ってきたかを知ることができ、自分の振り返りもできました。そしてお二人の実践から、やはり教師と子供のつながりから、子供同士へのつながりへと繋げていくためには、肯定的なフィードバックや承認する教師からの働きかけを十分に行うことも大切だと学びました。これまでも理解はしているつもりだったものの、改めて赤坂先生が仰っていたように教師のことを子供が見ていること、自分がまずは変わっていくことが大切なのだと気付かされました。また、居心地が良いということはそれぞれ異なっていても、最大公約数の居心地の良さとはどういうことなのかを子供と一緒に考えることも重要だと思いました。やはり目の前の子供をよく見ること、子供に寄り添うことが必要なことで、愛情を持ち続けられるようにしたいなと思いました。阿部先生の傾聴することや対話をすることは、一朝一夕ではできるようにならないと思うので、日頃から意識して過ごしていきたいと思いました。ありがとうございました。
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貴重なご発表ありがとうございました。中家先生の実践は非常に丁寧にAさんに寄り添ったものでした。友達との関係づくりの際には、価値づけることを意識されている点が印象的でした。実際にやろうと思うと大変なことだと思いますが、ぶれることなく教師と子ども、子ども同士の信頼関係構築を行って見習わなきゃなと思いました。白石先生の実践は、授業を通して心理的安全性を育成するという点が興味深かったです。学級経営と切り離して考えがちでしたが、具体的に授業場面での取り組みをご紹介いただき参考になりました。Ⅰ~Ⅲ期で目標や方法を変えて実態に合わせて取り組まれたところもなるほどと思いました。お二人の実践には目的意識と価値づけが共通しており、教師が何のためにそれを行うのか意識して取り組む必要があると考えさせられました。藤崎先生の発表では、居心地の3要素が印象に残りました。安心感は子どもが何かに挑戦するときに欠かせないものだと思います。私は、まず教師が安全基地となり教室に心理的安全性を保障することで、子どもが居場所を見出し、安心感をもてると考えています。そして安心感によって様々なことに恐れることなくチャレンジし、自己効力感が生まれ、ありのままの自分を受容する自己肯定感を育むことにつながるのだと思います。そんなことを思いながら、お話を聞いていました。また、松山先生の基調提案は研究論文そのものでした。文科省の論点整理との関連や尺度開発などとても刺激になりました。尺度の項目を見て、自分の学級ではできているのかなと思わずチェックしてしまいました。最後になりましたが、心理的安全性は担任として職員として最もほしいと願っているものの一つです。このセミナーに参加して自分の経験と関連付けて考える時間をもてたことは有意義だったと思います。もちろん、赤坂先生と阿部先生のお話も現場では話題にのぼることがほぼない内容で、学びがありました。



